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故ジル・ローランを偲んで

A blog to remember Gilles Laurent, who died in Brussels Attack in the middle of making his film about Fukushima / this blog is organized by his wife Reiko Udo

ジル、君も同級生だ。 Dear Gilles, now you are one of our friends from high-school, too.

先日、目が覚めた時に不思議な気持ちになりました。この7ヶ月くらいの間のことは、夢だったんじゃないかなと思ったんです。

「懸念していたテロがベルギーで起きて、ジルが巻き込まれて亡くなって、家族でびっくりして大泣きしたけど、引き継いだ映画が日本でも取り上げられて公開されることになって、有名人と一緒に映画祭で登壇しました」というところで目が覚めた。そんな、すごく長くて濃い〜夢を見てぱちっと目が覚めたものの、我に帰る。

「ほらね、ジルはまだ生きていてベルギーに居るだけだし、映画もまだ完成してないはずだし。次のスカイプはいつって言ってたっけ? それにしても今回は長い出張だなあ〜。」なんて思って、朝の支度をする・・方がしっくりきます。でも、そちらの方が私の想像であり、夢なんだなあ・・。

いつから現実と夢が半分くらい入れ替わってしまったのだろうか。そんな感覚です。

 

それにしてもこの10月は本当にすごい月でした。

高崎、京都と2つの映画イベントに登壇し、その間にベルギーから東京に帰省していたNHKブリュッセル支局の長尾さん達記者の方に会えて、来日したベルギー国王陛下夫妻と非公式なご対面があり、そのときに実は、もうひと組の犠牲者家族(同じ地下鉄内で意識不明の重体になったけれども生還された日本人男性とその奥様)のお二人にも初めて対面。この辺のことはまた機会を見て書ければ・・ですが、会いたかった方々に、次々と会えた月だったのです。

そしてこの10月29日に用意されていたもう一つの大きなイベントが、出身高校・福岡県立東筑高校の東京同窓会でした。名優・高倉健さんの母校であることが私たちの誇り! 今年は私たち86期生が幹事イヤーであり、1年前から皆があらゆる準備を進めていました。そして当日、ふたを開けてみれば、私たちの期は110名が大集合。確か1学年450名くらいでしたから、実に4人に一人が集まったという算段になります。すごい・・。首都圏在住メンバーが中心ですが、北九州市からも応援がたくさん駆けつけてくれました。

この同窓会自体は卒業生であれば老若男女、どんな年齢の人でも来れるので、お年寄りからフレッシュ大学生まで、実に全部で700名ほどが集まる大披露宴のような雰囲気のイベントです。

私はこの3月に思いがけずテロ事件で夫を亡くし、とてもではないですがお手伝いを出来なくなってしばらくが過ぎ、やっと再び準備に参加し始めたのは9月に入ってすぐのことでした。割り当てだったパンフレット制作からお手伝い。とはいえ、すでに優秀な企画&グラフィック担当の友人たちが居たので、私はちょこっとコピーや原稿をお手伝いしただけ。

そんなやり取りのために同級生の間でたくさんeメールが飛び交う中、ある日、皆が「ジルさんの映画をパンフレットの最終ページに入れよう」と言い出してくれました。

 

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それがこのページです。

タイトルに「東筑会86期は、ジル・ローランの「残されし大地」を応援しています。」とあります。映画そのものの紹介と共に、私のメッセージも掲載してくれました。

ジル、まさかこんなことになるとは思ってなかったでしょ。会ったことのない私の北九州市の故郷の同級生に「ジルさん、ジルさん」なんて呼ばれて。でも考えてみれば、君も1969年生まれで、この86期の大半と同い年。皆の人生が色んな方向に枝分かれてしていったように、46歳で亡くなった君も、同じくらいの長さの時を地球上で頑張ってついこの間まで、生きていた。皆の好意で、特等席を設けてもらいました。

それにしても、このページにも書かせてもらった私のメッセージですが、とてつもなく思うのは、「同じルーツがあるって本当にいいね」ということ。2年前からこの同窓会に参加していて、薄っすらと感じていたことですが、今年はその思いを本当に強くしました。

人生の旅をすればするほど、同じルーツを持つ仲間に会えるって、なんて素敵で心強いことなんだろうと。

東京に憧れて18歳の時に大学進学と共に上京し、その後ずっと帰省はしても、住むために戻ることはなかった故郷、北九州市。そして挙句に30代で会社を1年間休んでイギリスに留学してみたり、それが高じて(またはこじらせて!)ベルギー人と国際結婚までして、子供が二人も生まれて、そして最後にはその夫が、地球規模の事件の中で亡くなってしまった。遂には、銀河の一部に放り出されてしまったような気持ちでした。

たくさん旅をすることは、見聞が広がるということでもあります。ヨーロッパとつながるということは、中東やアフリカとも間接的につながることでもあり、世界はぐんと広がりました。一方で正直、難しいこともいっぱいありました。夫とはコミュニケーションの難しさに悩んだこともいっぱいあるし、日本人同士なら何となく私のボケっぷりを大目に見てもらえるようなことでも、うまく伝わらない場面が数多くありました。

出会った頃は、「そっか、二人ともカルチャークラブ聞いてたんだね〜!」なんて、タメ(同級生)であることに盛り上がったものの、深く付き合っていけば、やっぱり、過去40年ほどの間に育った文化的背景にはかなりの隔たりがあるし、歴史的にはもっと、交流のなかった時間の方が長かった国と国です。

 

でも、私には帰ってこれる場所があるんだなあ。

しょっちゅうボーッとしていて、本当に許してもらっていいの?という私ですが、「うっこ(私の高校生の時のニックネーム)変わってないね、いいね」と認めてもらえる、可愛がってもらえる。ものすごい安堵感があり、あの夢いっぱいだった頃に返れるような不思議な感覚があります。それと同時に、自分が来し方、足元がわかる。

打ち上げの時には、懐かしい顔が110個も並んだ光景に誰もが奇跡を感じたはず。もしかしたらもうこんなことは二度とないかもしれません。絆が強まったところで、これからもきっと散発的に集まることはあると思うけれども、今日のような”奇跡”はもう経験しないんだろうなあ。

会が終了した後も、LINEやfacebookで余韻を楽しむようにあらゆる楽しいやり取りをしていますが、パンフレットのデザインもしてくれた親友(実はなんとジルと全く同じ生年月日)が月曜日の朝に「みんな〜、間違えて会社じゃなくて、学校に行かないようにネ!」とメッセージ。本当にそうなっちゃいそうな勢いだったかもしれない。

 

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これがパンフレットの表紙のほう。キャッチコピーは「あの人に、逢える。」

 

さて、このイベントの私の割り当ては、パンフの他には(というかこちらがメインだったわけですが)壇上で司会進行を務めることでした。高校時代にバンドをやっていたので、なんとなく「ステージ度胸があるのでは??」ということで、今年の頭には抜擢??してもらっていました。でも、もう人前で歌うこともなくなって随分時が経つし・・最近では20人余りの職場の宴会で、司会進行をしたくらいです。それに、3月や4月の時点では、そこまで気持ちが戻ってこれるだろうか・・という基本的な心配も当然、ありました。最近に成ってからは、私自身が元気でも、喪中の私を見て暗〜い気分になる人は居ないかな・・などという密かな懸念もありました。でも「応援しているよ〜」という暖かい励ましに乗っかりました。

しかし思わぬ展開で、”舞台でスピーチをする”という経験が(映画祭で)二度続いた後での、この登壇。まるでいろんなことは、今日のこの日に結実するため・・だったりして・・と思ったほど。できる準備はしておくこと、でも変更になっても気にしない、そして最後は心を運ぶことだ。・・そんなモットーがごく最近出来上がっていたために、なんとなく落ち着いて臨めました。でもそれより何より、みんなの知力と労力を結集した事前準備に対して、それを最後の最後に、本番当日に、私が落としてはならぬ!という強い思いが芽生えていました。

 

でも、ここでまた不思議だったのが、今年は縁があるのですね、NHKさん!

司会進行の相棒として現れてくれたのが、86期ではなくて94期ではありますが、地元・北九州市で活躍中のNHKアナウンサー、猪原智紀さん。お会いしたのは前日だったものの、気遣い上手、プロならではの積極的な提案、役に立つアドバイスを色々と頂いて、彼と組めたことで自分が想像していたよりもずっとうまく行きました。前日と当日の準備の段階で、不安が一つ一つ消去されていって。もともと緊張しぃなのに、最後には本番が楽しみになっていたほどです。最終的には、厚かましいながらも姉弟のような、他のメンバーから言わせると「とても息が合ってたね〜!」というコンビとなることができました。「鵜戸さん、声が菅野美穂に似てますね」など、乗せる乗せる。そしてこの会の司会イメージは「紅白歌合戦で行きましょうね!」など。すっかり、厚かましい脳内イメージのミルフィーユです。

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こちらは会も終わって着替え、すっかりリラックスした時に交わした握手。猪原さんも本当にありがとうございました。

 

そしてさらに、この日の奇跡っぷりを印象付けてくれた締めくくりが、三次会として訪れた夜のイベント、同級生の男子が経営している吉祥寺にある「サーカスカフェ」というショーパブ見学。

アットホームな一室の中でめくるめく煌びやかなダンスショーが展開。ダンサーはUSJ出身の若者などハイレベル。そして、それより何より、同級生・本城トオル君の47歳にしてスレンダーなボディと艶姿、素晴らしいサービス精神で繰り広げられるショータイムに、や、やられました・・。そしてさらにそれを、一緒に貸切状態で見ている顔、顔、顔・・。暗闇の中、煌びやかな照明に照らされている弾ける笑顔が全て、大好きな同級生たちという不思議さ。

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このショーパブはこじんまりとしたスペースゆえに、本当にダンサーを文字通り目の前で見ることができる、またとない場所です。しかも半端ない練習が必要であろう、クオリティの高さをキープしながらトークも含めてどこかあったかい雰囲気。

私、今度は女子会だか子供連れでも(4歳と6歳でもきっと好きだと思う)、また行きますよ!! 久しぶりに、心から明るくなれました。ダンスってやっぱり、生きていることを謳歌する素敵な表現方法だ。

 

奇跡続きの10月はこうして終わっていきました。そして10月最後の奇跡は、奇跡でありながらも地に足をつけさせてくれる、ルーツ確認のイベントでした。

洪水のように、愛情と、ご褒美と。

いろいろなことを頂いた1か月が終了。

みなさん、ありがとう。神様、(ちょっと恨んだこともあったけど)ありがとう・・。

テロが起きた直後のfacebookにも、あの時も実感のままに書いたけれども、テロなんて結局、失敗なんだと思います。かえって彼らの敵であろう「愛情」や「友情」や「連帯」という意識を人々の心に強く目覚めさせるだけ・・なんだと。より良い世界の実現にはまだまだ時間がかかるのだろうけれども、優しい人たちが大半であるこの世の中を私は信じ続けます。

そしてこんなことを書くのは縁起でもないけれども、もしここで、私自身も不慮の事故で亡くなるようなことがあったとしても、私は悔しがらないんじゃないかと思う。一生懸命頑張れたひとときがあった! という意識がある今ならば。そうなってしまったんなら仕方ない、今度は私が皆をあの世から守る方に回るんだぞ・・と思えるような気がする。

もしかしたら、きっとジルもそんな風な思いで、あの世に行っているんじゃないか。そんな気がします。

でも、実際には私はまだまだ死にませんよ〜! この世とあの世で頑張るツインタワーです。これからも不思議な巡り合わせなどのコーディネートについては、ジルがあの世で頑張ってくれるでしょう。そして口があって喋ることのできる私は、この世でまだまだ喋り続けようと思っています。

 

我が東筑高校 の”名誉”86期、ジル・ローラン監督(1969年9月16日生まれ)の

映画「残されし大地」は2017年春、公開予定!

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