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故ジル・ローランを偲んで

A blog to remember Gilles Laurent, who died in Brussels Attack in the middle of making his film about Fukushima / this blog is organized by his wife Reiko Udo

ベルギーからの映画評 A review from Belgium

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本国ベルギーでは、すでに昨秋公開された映画「残されし大地」。

その時の映画評を一つご紹介します。Cinergieという現地の映画サイトに掲載されたもので、この中の一部抜き取った文章を、映画の予告編の中にも使わせていただいています。美しい文章をありがとうございます。

ちなみにベルギーの映画館での上映は飛び飛びの日時でしたがいつも満員で、誰もがエンドロールの終了後もしばらくは立ち上がらず、余韻の中に残ってくれていたそうです・・。

 

 

『残されし大地』ジル・ローラン

 

 ジル ローラン作『残されし大地』。感動し頭から離れることのない、なんというこの美しさ。この作品が反響を巻き起こしているのは、この映画監督が亡くなったという事情だけではなく、失楽園を要約し象徴化しているからだ。家の庭にある樹齢100年もの木々を、この土地を破壊する目に見えない危険な脅威となる高濃度の放射能を持っているという理由で切り倒すシーン。海と山の間にひっそりと佇み、川や草原溢れる東京の昔からある野菜畑は、福島の原子力の大災害で警戒区域となり住むことができなくなってしまった。この地域は今もなおバリケードで近づくことができないが、田舎の平穏な美しさを帯び、末期の命の見せかけの草木が青々と茂っている。

除染作業は終わりの見えない取るに足りない対立へ至っている。

 

 近隣の村である富岡町は捨ておかれた。バリケードで封じられた家々は荒れている。耐え難い沈黙がみなぎっている。住民たちは周りの農場同様、ペットを見捨てて逃げ出した。牛や馬は農場に繋がれたまま残されていた。野良犬や野良猫はあちこちに逃げた。数人の住民たちだけが離れないことを決め、先祖のいる土地に残った。ジル ローランはこの土地の素晴らしいポートレートを描写した。残った住民の一人である松村さんとの出会いが、アラン ド アルーがそうしたように、この映画監督に福島の犠牲者らのより多くの証言を記録することを決心させた。松村さんを介して、私たちはこの惨事を問う。我々は彼の日常や孤独、人々との出会いを見守る。被災したこの自然の美しさを、光を、そして変わらぬ四季の移り変わりを目の当たりにする。彼は日本や外国において土地を見放すことへの抵抗の代弁者としての役割を演じている。彼は生命に関わる危険を被り、癌に脅かされることから回避していないが、その理由は全く的確な他の質問に答えることで出している。

 

「生命の危機に直面している時に、私たちの慣れ親しんだ場所や歴史にどのような重みがあるというのか?」また「私たちが運命を左右するほどの決断をする時、どのような無意識の動機の力が導いているのだろう?」と。

 

 この映画は松村さんの父親が救済した十数匹の猫たちを見事に連れて歩く映像から始まる。ジル ローランの話を通じて、2011年の津波の後の現代のノアの方舟のようだと思わずにはいられない。

 

 ジル ローランは2013年の秋に、日本人の妻とともに東京に住み始めた。妻と一緒にこの映画のロケハンに取りかかった。彼の日本文化に対する個人的な理解がこの作品に影響を与え、インタビューした人々の証言にユーモアや礼儀正しさ、他人への尊敬など独特の特徴を与えている。同様に犠牲者であることを受けとめないことや、自尊心の距離を保つことで、非難から逃れている。政府や原子力発電所の開発者に対して至るところに見られる警戒心が、警戒区域の住民たちが戻ることを妨げている。若い世代は身を落ち着けるために両親の住むこの土地を離れるという選択肢しかない。伐採や道路の洗浄などの除染作業は、あらゆる国のボランティアに助けを求めている。

 この捨ておかれた土地に残った人々は、その連帯と日常生活に戻ったことに感謝している。この映画は儚い希望の旋律で終わる。一人の女性が自宅に戻り、3人の友人を招待する。彼女が友人たちに差し出す素晴らしい果物がまるで静物画のように映されている。しかしすでに私たちは警戒区域から出ていて、バリケードと侵入禁止区域を再び目にする。ジル ローランは完成した自身の映画を見ることはなかった。原子力の活動家や日本を愛する人たち、そして映画ファンにこの映画を伝えることが大切である。これは傑作だ。

                            セルジュ ムーラン

 

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