故ジル・ローランを偲んで

A blog to remember Gilles Laurent, who died in Brussels Attack in the middle of making his film about Fukushima / this blog is organized by his wife Reiko Udo

ふたつのフライヤー。Two versions of flyer

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左がしばらく見慣れていた、昨年末まで付き合っていたベルギー版のフライヤー。

そして右が先ごろ完成した日本版のフライヤーです。

 

ふたつとも後ろ姿であることには変わりがないのですが、ベルギー版は大地を前に佇むひとりの老人。(たまに、これがジル監督?と聞かれることがありますが、違いますよ〜。メインの出演者である松村直登さんのお父さんです。確かにジルも40代ながらすでに白髪で、よくブルーっぽいTシャツを着がちではあったのですが。)

 

私がもうすっかり、この路線のビジュアルでいくのかな・・と思い込んでいたところ、12月のとある日。配給会社・太秦の事務所で打ち合わせをしていた際に、唐突に、「はい! 今からメインビジュアルを初公開します!」と言われました。

え? 新しいチラシ、作ってたんだ! 

しかし、最初にそれを見たとき・・私は軽い衝撃を受けました。これなんだ。松村さんでもお父さんでもない。こちらは後半に登場する佐藤さんというご夫婦の後ろ姿です。そして、タイトルと結びつくような「大地」の面積はむしろ、狭まって見えます。

 

けれども戸惑う私の顔に向かって、「これは、ご夫婦です。ジルさんと鵜戸さんのつながりも象徴したくて。奥山さんも気に入っていますよ。」と言ってくれたとき、私の衝撃は一瞬で横に吹き飛び、現金なもので「え、じゃあ急に気に入りました!」と答えていました。

 

よくよく見ると、ご夫婦が向かう先は黄色い花々の咲く大地であり、しかもご先祖さまのお墓が写っています。実際に、お彼岸でお墓詣りに行くところを捉えているのです。美しい場所、希望のある場所へ向かう姿。それていて、あちら側は死の世界を象徴する場所でもある。まさに生と死が混じり合う、不思議な空間を作り出しています。

 

ジルが亡くなってから常々、生と死の境目って、一体何だろう、と思ったりしています。こちらとあちら、実はすごく近いのかな・・など。私から見えないだけで、ジルはすぐそこにいるのではないか。この世とあの世のツインタワーで知らず知らずのうちに活動してきていて、今後もそうなのではないか・・そんな気がすることがあります。

そんな私のぼんやりとした思い全ての、象徴のようなビジュアルでもあります。

 

映画の中では、このシーンは本当に一瞬。予告編では、最後にこの場面が挿入されています。よく見つけたなあ。

 

ベルギーでジルが亡くなる瞬間まで、どちらかというとワンマン体制で作り上げていた映画が、今は完全に私との二人三脚のような形で、ここ日本で上映されるに至った。そんな象徴になるビジュアルを発見してもらったことに・・感謝です。

 

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ちなみに私の子供たちは、この鬱蒼とした木々から抜ける空間の形を、「あひるみたい!」「いや、ハート♡だよ!」と言い争っています。子供の眼ってそれはまた・・・それで可笑しい(笑)。

 

映画「残されし大地」公式サイト