最後の手紙 The last letters to his daughters
「これ、なんだったっけ・・」
先月末に、こどもたちと部屋の整理をしていたとき、ふいに発見したカードが2枚。
めくると、懐かしいジルの筆跡が目に飛び込んできた。こどもたちの名前が宛名として綴られている。日付は、2016年3月・・。
そうだ・・! 亡くなる直前。
一昨年の3月に入ってまもないころ、家に届いたベルギーからの小包に入っていたものでした。
3月11日(奇しくも震災の日と同じ)は、次女の誕生日。当時、4歳になろうとしていた。ジルは、不在ながらもあれこれと考えて、事前にプレゼントを送ってくれていて・・。
次女へのプレゼントはボーダーのワンピース。それに、長女のほうにも不公平にならないように小さなオモチャが添えられていたのを思い出します。
これが、その誕生日のメッセージ。
(訳)
2016年3月11日
お誕生日おめでとう、僕の小さなリリ
ついに4歳だね。今はもう、りっぱな”女の子”になったね。
とてもすばらしい1年になるように願っているよ。
もうすぐ会えるのが待ちきれないよ。
たくさんのキス!!!!を。(心で)抱きしめているからね。
君のパパ、ジルより
そして、こちらが同時に、長女に寄せたメッセージ。
(訳)
大きいすずちゃん、
こっちのカードは君に。喜んでもらえると嬉しいな。
次は、君の誕生日だね。
その時には(注;6月18日です)、パパもそっちにいるだろうから、いっしょに祝おうね。
たくさんのキスを。パパは君をとーーーーっても大好きだよ。
ジル
涙があふれました。
長女の誕生日を一緒に祝うこと。それは、その後に叶わないことになるなんて。
じつは、このカードをもらっていたこと。しまっていたことを、忘れていました。なぜなら、そのときの文面としては、ごくごく当たり前の、私の知っている子煩悩なふだんのジルだったので。
これが残ることが、ものすごく特別なことになるなどっとは、思ってもいず、後で普通にレターケースに仕舞っていたのでしょうね。
このカードが届いた後、2週間後に、二度と会えない存在になるなんて、そのときは思いもよらなかったのです。
今、こうして見つかったカード。
私が常々、「もっと夢でもなんでも、ジルからのメッセージがあればいいのに・・無音はいやだ」と心の中で思っているので、見つかるようにと仕向けてくれたのかもしれません。
3月はなかなか、心穏やかには過ごせない月です。
3.11もあれば、3.22もくる。
その狭間で、心は何度も揺れ動きます。
このカードにジルが自分自身で装飾した、黄色の蛍光ペンの模様は、どんどん薄くなってしまうのでしょう。
でも、このカードの中にこめられた、ジルの子どもたちへの愛情は、永遠に消え去ることのなく、真空パックされたものなのだと思います。
このときだけでなく、ずっとずっと、有効で、温かさを運んでくれるメッセージなのだと思います。