故ジル・ローランを偲んで

A blog to remember Gilles Laurent, who died in Brussels Attack in the middle of making his film about Fukushima / this blog is organized by his wife Reiko Udo

心からファッションを楽しむこと。To enjoy fashion from the bottom of my heart

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アラウンド50のための女性誌、エクラ。2017年2月号の巻頭特集は「新年、服の力で新しい私になる」。ビジュアルもコンセプトも大好きな特集です。

 

私自身の仕事は雑誌の編集です。主に常にデイリーな女性のための服について考え、まとめてきました。若い頃は若い子の雑誌、この年齢になってからはこの年齢の雑誌、とたまたまですが実年齢に沿って異動してきたので、常にワクワクとそれなりに楽しんできた感もあります。

 

ジルが昨年3月に亡くなってから現場に復帰するまでは、数週間と自分でも意外に短いものでした。(忌引きとしてはそれでも長い。実質的に葬儀が海外だったのと、子供達を実家に預けていたのでその引き取りに時間がかかったりと・・。)ただ、しばらくはデスクワークから復帰して、そのうちに次号の打ち合わせに進んで・・と、静かな仕事から徐々に慣らしていく感じではありました。

いざ復帰しようとした際、最もその時の心理から遠かった仕事は、ファッション撮影の”現場”。再びスタッフとアゲアゲな感じで、「可愛い〜!」「素敵!」と叫びながら、仕事ができるのかどうか。その時は想像がつきませんでした。でも、もう20年以上やっている仕事で慣れたスタッフもたくさんいます。いざ始めてみると、そして徐々に慣らしていけばそれなりに仕事は進められて、5月にはいわゆる「アゲアゲ」な現場にも立って楽しくお喋りをしていました。

 

ただ、ずっと「頭で」やっていたのだなあと気がついたのは最近のこと。知っていることであり、嫌いなことではなく、頭や手や口はそれなりに早くからしっかり働き始めてくれていたものの、「心が」動いたのは、しばらく経ってからだったのだと後で気が付きました。

 

ブレイクスルーになったのは、10月の京都国際映画祭で「何を着たらいいか」を思った時。監督代行だから派手でない方がよくて、でも喪に見えるのは嫌だから黒は避けたい、でも女優さんと並ぶんだから品質はよくないと絶対にわかってしまう・・。そんな思いにぴったりだったのが、デレクラムというブランドのネイビーのシルクブラウスでした。とあるファッション撮影中にスタイリストさんが用意していたものを見て、「これ!こんなのかも!」と心の中で叫ぶ。でもその時は言い出せず、後からプレスルームに個人的に電話をして事情を話し、借りに行くことに。

 

ご好意でお借りしたブラウスは結果として意図にぴったりとはまっていて、ほめられました。「なんだかとても嬉しい!」という、服を着て得られる、あのかつて知っていた気持ちをまずは呼び起こしてくれました。

 

そこからはその成功体験とともに、一気に気持ちが氷解していったように思います。

 

気がつくと、ときめいたものには、頭ではなく、心の方から「かわいい〜」「素敵!」と言えるようになっていました。しかも今では本来の仕事に戻れたというよりも、むしろもっと気持ちが深くなったような気がします。

 

そんな風に素直に言えるという今の状況に感謝・・という気持ちがあるからかもしれない。

または、本当に素敵だなと思った時は、心の根っこのようなところから、その服や写真に吸い付いてくような感覚が芽生えます。「ときめきの価値」のようなものを再認識したというか、心をもっとピュアに再生した感があります。

 

心からファッションを楽しむこと。

 

それは心に動きと華やぎを生み出してくれて、より納得のいく人生を送れることかもしれません。あまり成功ばかりでもないけれど、楽しむ気持ちは忘れないでいたい。

 

ただ、個人的には目下の悩みは・・・ゆっくり試着をしたり、買い物に行ったりする時間がないことです!(笑)

 

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京都の映画祭で着たブラウス。もちろん、モデルさんとは違う仕上がりだけど(笑)、「その日の私」に、大いに、大いに役立った! 今後も基本はネイビーで行こう、派手ではなくツヤ感でいこう、などと”監督夫人”(?)としての指針になりました。