”IS”の事実上崩壊
2016年3月17日木曜日付のベルギーの新聞、Le Soir。2015年11月にパリで起きたテロの主犯格が逮捕されたことを受けてのグループの分析をする記事。ジルが落命した時に持っていたリュックサックの中に、これが本体から抜き取られた形で、入っていた。
昨晩のニュース速報。"IS”が"首都”としていたラッカが陥落し、事実上の崩壊を迎えたとのこと。
約3年前、このグループの結成をニュースで耳にし、ジルとともに何ともいえない暗い気持ちで憤った。
そして約2年前、彼はこのグループのパリでの大規模な犯行にショックを受けながら、そして真犯人がベルギー人だったことに、特に彼自身は大きなショックを受けながらも、ベルギーへと一時帰国した。
2016年3月に入り、パリでのテロ主犯格が逮捕された直後。報復のために起きたベルギー同時テロにて、ジルは命を落とした。
彼の遺品となったリュックサックの中に入っていた現地の新聞、Le Soirからの抜き出し記事は、なんとそのベルギーの犯人グループを図解で解説したものだった。きっと、気になっていたのだろう。調べていたのだろう。メンバーの顔ぶれを見ながら、何を感じていたのだろうか。
まさか、そのグループとものすごい偶然で接触し、数日後に命を落とすとは知らずに。
あの日から、ジルのいた場所はとても静かだ。そばにいることは分かっているけれども、音声としては、無。あんなにお喋りが好きな人だったのに。
私と娘たちは光に支えられて、すこぶる元気だ。何もなかったように見えるかもしれない。けれども、ふとジルの声がリアルな耳にこだましないことは、どうしても時々寂しく感じられている。
こんな風に、身近な誰かの居た場所を無残にぽっかりとした穴にしてしまう。こんなことを一体何人ぶん繰り返してきたのだろう。彼ら・・というか、得体の知れないグループというか、宗教とも思想とも呼べるに及ばない、ただの魂なしののっぺらぼうたちは。
”悪の帝国”でも、栄枯盛衰。
悪はいつの日か自滅する(と信じたい)。
けれども、ウイルスのように飛び火した過激思想は、完全に取り去ることは難しいだろう。少なくとも、しばらくは。テロのない世の中にするために、本気で取り組まなくては行けないことは何なのか。飛び火を過剰に刺激しかねない、戦火というものを避けながら。
過激思想は病だ。そのウイルスにかかる人は、弱っている人。対処療法だけでなくて、発生源の歴史を把握すること、明らかなる悪に触れさせないこと。怖がるだけではなくて、そして善悪の中の悪であるという烙印を押すだけではなくて、何か研究できることがもっとあるのではないだろうか。
私の中にも答えはまだ出ていないけれども。