故ジル・ローランを偲んで

A blog to remember Gilles Laurent, who died in Brussels Attack in the middle of making his film about Fukushima / this blog is organized by his wife Reiko Udo

もうすぐ10年。そしてもうすぐ、5年。 ⑲

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映画「残されし大地」より。冒頭部分に出てくる防災無線

 

Vol. 19  いよいよ3月です

 

いよいよ今でも様々な人の思いが重なり合う、3月に入った。

3月11日で、東日本大震災から10年。

そして3月22日で、ベルギーテロからちょうど5年だ。

 

ジルが作った映画「残されし大地」のテーマは、もうあのような震災による原発事故といった悲劇を繰り返してはいけない、ということだけではないと思っている。

 

それよりも私自身が感じ取ったテーマは、

「誰もが自らその時信じる、最良の道を選択していくこと」だと思っている。

 

生きていれば何があるかわからない。Aの道を進むはずだったのに、その道が急に閉ざされることがある。そこに最初にあるのは絶望だ。でも、迷うけれども、迷っているうちにBの道、Cの道という、考えもつかなかった選択肢を人々は歩み始めていることがある。

 

この映画の中でも、避難した人、しなかった人。いつ帰ってくると決めている人、いない人。様々な人が登場してくる。でも、最終的に何がベストな結果を導くかは誰にもわからないわけで、その時そのつど、自分の思う道を少しでもつかみ、一歩ずつでも進んでいくこと。ちゃんと両足の重みを感じて立っていること。その行為こそがベストなんだと思う。

 

迷って即決できなくても、自分で「迷っている」と自覚してさえいればいい。そして、他の人の選択は尊重すること。それはおかしいのではないか、なんて言わないことだ。

 

ジルは福島へ行くことも、ベルギーへ帰省して映画編集を終えることも、迷いながら考えながら、ひとつひとつの選択をしていった。まさかそれで、運命と運命の交差するポケットのようなものの中に入り込んで、二度と戻ってこれなくなるとは思わなかったけれども。

 

でも彼は後悔しているかな? 思いがけず命を落としたことは悔しかったとは思うけれども、もしかしたら、一連のことには後悔はしていないかもしれないなと思う。人が工夫をしながら自由に選択をしていくこと、その選択を尊重し合うことを誰よりも望んでいた人だったと思うから。

 

 何が起ころうと、自分の選択をしていく。私はジルほど勇敢ではないけれども、迷っている時期があってもいいから、小さくてもオプションでも選択をしていくこと。それを強く意識するようになった。

 

いまのコロナ禍においても、私たちは日々、いつも以上にさまざまな選択に迫られている。Aの道を失うことも多い。オプションB、Cを余儀なくされることもある。人の行動も気になる。でも迷ってもいいから、即座には負けない。そのうち次の一歩を踏み出すつもりで。

 

それぞれの目の前に今ある、最良の道に自信を持とう。

 

何があっても負けないぞ。

一瞬負けても、そのたびB'とかC’とかDとかEとかのオプションで、

また復活すればいいんだ(笑)。

 

私たちの前にはレジリエンスを10年通して磨いてきた、大先輩たちも居る。

 

またこの映画を通して、見た方に感じ取ってもらえるものがあればといいな思う。

 

 

3月11日〜22日(12日間限定・無料オンライン上映)

「残されし大地」The Abandonned Land

※詳細は追ってこのブログでも発表します。

 

2016年に公開された時の「予告編」はこちら↓

www.youtube.com